ポイント
オプションは株価と行使価格の差がプラスになると本質的価値が発生する
本質的価値はオプション価格に足され損益に影響する
オプション価格は本質的価値とプレミアムの二つの価値が足されたものです。 ここでは本質的価値の説明をします。
株価と行使価格の差
オプションは株価と行使価格の差がプラスになると本質的価値(イントリンジック・バリュー)が発生します。
オプションの株価と行使価格の差とはどういうことでしょうか。 プット、コールそれぞれ下のようになります。
- プットオプション: 行使価格 - 株価
- コールオプション: 株価 - 行使価格
となり、どちらもこの差がプラスになっていると権利行使できる状況になります。
プット、コール両方いっぺんに考えるとこんがらがるので前章と同じ下の状況のプットオプションで考えてみましょう。
このグラフだと株価が行使価格より1ドル下がってますね。
この行使価格と株価の差、1ドルを本質的価値(イントリンジック・バリュー, Intrinsic value) と呼びます。
イン・ザ・マネー
オプションに本質的価値が発生している状態をイン・ザ・マネー ( In the money、ITMと表記する)と呼びます。上の図ではプットオプションが1ドルITMになっている、と表現します。
オプションと株価の差はITM以外にも呼び名があります。プットオプションだと下記になります。
- ITM (イン・ザ・マネー) 行使価格 > 株価 本質的価値 : プラス
- ATM (アット・ザ・マネー) 行使価格 = 株価 本質的価値 : ゼロ
- OTM (アウト・オブ・ザ・マネー) 行使価格 < 株価 本質的価値:ゼロ
この場合、「ザ・マネー」は現在の株価を指しています。なので株価が行価格に近い、という意味合いでクロース・トゥ・ザ・マネー(close to the money)と言う表現も使います。
プットオプションのOTM, ATM, ITMをグラフにすると下のようになります。 行使価格が株価より下ならOTMで、上ならITMです。 コールオプションではITMとOTMが入れ替わります。
オプションはITMの状態では必ず本質的価値が発生しています。 かたやOTMプットオプションは本質的価値がゼロでマイナスになりません。OTMオプションは権利行使できないからです。
ショートオプションでアサインされた場合、含み損を抱えた株を買いとらされるので新たに損が発生するように思いますが、実は権利行使される前のオプションにすでに本質的価値相当の損失が出ています。なのでアサインされて損失が新たに発生する事はありません。
ITMのオプションは期限日に権利行使されますが、自分でする必要はありません。期限日にITMのオプションはブローカーが自動的にエクササイズ・アサインを行ないます。
本質的価値によるオプション価格の増大
オプション価格は本質的価値とプレミアムの二つからなります。 プレミアムはオプションの要と言えるもので、次の章で解説します。
オプション価格 = 本質的価値 + プレミアム
プットオプションが1ドルITMになっているとします。これは本質的価値が1ドル発生している状態ですね。
ここで99ドルの株を100ドルで売買する権利はいくらでしょうか。 これは最低でも1ドルです。これは本質価値がオプション価格に足されたと考えれます。権利行使そのものをしなくても、権利行使できる状態(ITM)になると本質的価値がオプション価格を増大させる仕組みなわけですね。
ここで、株価が下落する前にこのプットオプションを10セントでロングしていた(買っていた)としたらどうでしょうか。 10セントのオプションが1ドル以上になり90セントの利益が出ますね。
逆に10セントのオプションをショートして(売って)いたら90セントの損になります。
本質的価値はオプション取引の損益に直接影響します。
まとめ
権利行使そのものが起きなくても権利行使できる状態になると本質的価値が発生し、オプション価格が増大します。なのでプット・コール、そしてロング・ショートの組み合わせそれぞれの視点から権利行使の仕組みを理解しておくのは大切です。
本質的価値は株価の動きのみによって変動します。 オプション価格は本質的価値とプレミアムが足されたもので、次章ではプレミアムを説明します。
本質的価値のまとめ
- 権利行使の仕組みによってITMの時に発生する
- 発生した本質的価値はオプション価格に足される
- 株価の動きのみに左右される